狂人作家         黒田幻の日記

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宇多田ヒカルさんが出ていたTVを観て思った事

 ふだん、ほとんど洋楽しか聴いてない私が、なんとなくつけていたTVで宇多田ヒカルさんが出ていて、そのまま聴いていた。

 

 で、ずっとこの人はすごいと思っていたのだが、さらに別の意味でもすごいと思わされた。

 

 以前からそう思っていたのは、作詞作曲の才能である。

とかくリズムに乗りにくいと言われている日本語の歌詞を、彼女はとてもリズミカルなメロディーに乗せてしまう。

 そういう意味では、サザンもすごいのかもしれないけど、私個人は、桑田さんの歌詞の、女性をあくまでも自分とは異質な者としてとらえているような、なんというか、脂ギッシュな男目線みたいなのがバリバリ伝わって来る所が苦手である。

 それに比べると、宇多田さんの歌詞は、「あなたと私」ではなく「私とキミ」だったり、印象が良かった。

 そして、デビューしたのが10代であったのにも関わらず、自己中心的な感情の赴くままに突っ走る恋愛ではなく、自立した大人同士の恋愛特有の緊張感みたいなのが常にある所が不思議でもあった。

 その不思議さと相まって、私は素直に、彼女は天才だと思っていた。

 

 で、今回別の意味ですごいと思ったのは、彼女の母親に対する感情だ。

 以下、録画していた訳ではなく、私が覚えている事だけを伝え書きしているので正確ではないが、

「人間の基本的な人格が形づくられるのって、2~3歳位までじゃないですか。でも、普通はその頃の事って覚えてないんですよね。空白の2~3年間。そして、それが空白であるから、全ての悩みとか苦しみがそこから出て来る。私が親になって変わったのは、その空白がわかった事。自分の子供を見ていて、あの時母親は、今の私と同じ感情だったんだ、自分の子供の頃って、ああこんなだったんだっていうのがわかって。そこで、親に対する感謝とか出てきました。」

 

 何がすごいって、悩みや苦しみしか無い所から、「感謝」が出て来るのがすごいと思った。

 

 宇多田ヒカルさんの母親の藤圭子さんといえば(以下、ネットでの噂や世間の評判からの記述です。藤さんのファンの方からは反論があると思いますが)、再婚相手との生活の邪魔になるから、娘を海外に住まわせ、売れたら今度はとたんに親面し、あげくには自殺してしまうという、親としては最悪の事しかしてこなかった人だ。

 そして彼女も統合失調症を患っていたという。

 

 自分が子供を持つという事。自分の子供に対するまなざしが、かつての子供であった自分への親のまなざしのように感じられる。

 

 これは、子供を持たない私も、たぶんそうであろうと常に予想していた事である。

 

 だからこそ、これはもう、私にとってはすごい恐ろしい事だった。

「もう嫌だ、死にたい」「こいつが死んでくれたらいいのに」

ありとあらゆるネガティブな感情が詰まったパンドラの箱のようなものに感じられた。

 

宇多田さんの場合は、自分でも意外なポジティブな感情が出て来た、という事なのだろう。

彼女には離婚しても困るどころか、十分な稼ぎがあり、それが心の余裕にもつながったとも考えられるが、それにしてもすごい事だと思った。

 

パンドラの箱からは、ありとあらゆる災いが飛び出したが、最後に「希望が残った」。

このエピソードを連想したのは、彼女の「感謝」という一言だった。

 

私は、子供を持たないまま、子宮体癌になって子宮・卵巣を全摘出した。

パンドラの箱は、最後まで開けられなかった。

 

虐待は連鎖するとも言われているが、子供を虐待してしまう母親のケースで一番多いのは、本当にひどい身体的虐待を受けていたり、宇多田さんのように母親から拒絶されていたようなケースよりもむしろ、私のように過干渉な母の元で育ったケースだと読んだ事もある。

 

だから、私は開けなくて正解だったのかもしれない。

 

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