狂人作家         黒田幻の日記

    心理学・精神分析に興味を持っていた社会不適応者。ついに自分自身が精神病になる。    幻覚・幻聴実体験記「狂気」絶賛発売中!

少子化問題と子供を持つ事を希望しなかった私の事について

 市民運動系のデモや集会では「子供をまもれ!」と言うものが多い。

 今自分だけの問題ではなく、未来の事を憂いての発言なんだから、それは当然の表現でもある。

 子供のいない私は~たまたま子宝に恵まれなかったのではなく、絶対に結婚・出産というレールを忌避していた私は、自分がそのコールを復唱する資格があるのか、いつも複雑な気持ちになりながら唱える。

 

 だが、ニャートさんの「東大女子を過労死させたり、京大専業主婦をもったいなくさせているのは日本社会」というブログを読んで、今までモヤモヤしていた部分が、すごく腑に落ちた個所があった。

 それは「私のように地頭が悪い子どもは、膨大な時間を受験勉強に捧げることになる。だが、大学卒業後に企業から求められるものは、受験勉強とは全く違うものだ。」という個所だった。

 私も、彼女とはちょっと違うが似通った事情があり、一時期ガリ勉していた。

 だが、世の中の人間関係、仕事には全く適応できず、精神病を発病するまでは、ただただ辛い人生だった。

 結局、障害者になり、今の就労支援で働けるようになって、初めて音楽などの趣味に費やす時間もでき、文化的な生活といえる生活ができるようになった。

 今が人生で一番幸せだ。

 

 で、これは人によって意見が分かれる所だと思うが、両親とも生活保護障害年金でなんとか生きていける人が、新たに子供を持ちたい、と思う事には、私は常々懐疑的であった。

 自分たちがそうした保護や措置無しでは生きてゆけないのに、生まれた子供は当然自分たちの遺伝子を引き継ぐわけで、そうした子供達が、保護なしで生きて行けるのかどうか、不安にならない、というのが、きわめて無責任な感じがしてしまうのだ。

 

 私が子供を持ちたくなかった理由というのは、性別違和や、まず自分の自由が無くなるのが嫌だという、それだけでも十分な理由があったが、今までなんかモヤモヤしてはっきり語れなかった部分もあった。

 そう、それが、自分が障害者になって保護される人生の前は、ただただ社会に適応できずに辛いのみだった事に由来する。

 自分の遺伝子を引き継いだ子供が、この世の中に生まれてきて幸せになるはずがない、という予感である。

 

 自分自身が、死にたくても死ねないというだけで生きていて、人生に何の希望も見いだせなかった。

 これと同じ思いをしなくてはならない人間を、わざわざこの世に産み出す、というのが、きわめて残酷で無責任な事に思えるのだ。

 

 今、少子化が加速する中、恋愛も結婚も望まない、子供も作る気も無い若者が問題視されているが、彼らも、たぶん、私と同じように感じているのでは。

 

 単にデートしたりの出会いや、子作りの時間を持てるようにするために、というだけでなく、若者自身が生きていて楽しいと感じられるようになり、だから生まれてきて子供も楽しいだろうと思えるいう社会にするために、ブラック企業対策は、少子化対策とは切っても切れない気がする。

 

 そして、生きていて辛くない若者を増やすためには、仮に、発達障害があっても、セクシャルマイノリティーであっても生きやすい、多様性を認める社会にしていく事も肝なような気がする。

 

 バーニー・サンダースさんの本に、「彼ら(保守的な議員やキリスト教原理主義者など)にとっては、セクシャルマイノリティーは反家庭なのだ」という一文があったが、これも、私にとっては、自身が渦中にある、しかし、モヤモヤしてすっきりとした答えが出せない問題であった。

 

 私は、母親が日本会議のルーツになった人達と同じ「生長の家原理主義」(今の教祖の代の「生長の家」はずっとリベラルになっている)の考え方だった。

 

 私もやはり、「家庭」という概念に嫌悪感を抱いていた。

 家父長制、そして女の子だけがやらされる「家庭科」(年がバレる。笑)が大嫌いだった。

 

 セクシャルマイノリティーの皆が、単に同性婚が認められたら幸せになるか、には、当事者からも疑問の声が上がっている。

 「家庭」などと関係なく生きられる事こそが、セクマイに生まれて良かった事だ、と言い切る当事者もいる。

 予測であるが、そういう人は、たぶん皆、保守的な家庭観に自分を否定され傷つけられてきた人達だと思う。

 親がリベラルな考えの持ち主で、セクマイを肯定する環境で育った人は、割と「同性婚」が認められる社会を歓迎するのでは。

 

 そして、子供が生まれないカップルでも、不幸な子供を引き取って幸せにする事はできると思う。

 「チョコレート・ドーナツ」という映画は、このテーマを正面から扱っている。

 

 補足:私がこのような考えに至る前、ひたすら結婚や出産というコースを嫌悪・忌避していた頃の心境~そしてそのあまりに精神病になった~をつづったのが拙著「狂気」です。

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