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狂人作家         黒田幻の日記

    心理学・精神分析に興味を持っていた社会不適応者。ついに自分自身が精神病になる。    幻覚・幻聴実体験記「狂気」絶賛発売中!

介護、認知症に関して思う事②

 ここ数日のアクセス数の多さに驚いている。

 前回の日記は、だらだらと書いていて、特に面白いという訳でもないと思うが、やはり介護というテーマには、関心のある方がそれだけ多いという事だろう。

 

 で、前回の続きであるが、結果から言うと、そのご老人は通院の日までにお風呂に入れなかった。

 デイケアは、まだ介護認定が下りていないし、自宅のお風呂は風呂釜が高く、その方一人で入るのは危険だったが、相談センターの方々が待機しつつ、まずはその方一人で入ってもらい、何かあったらすぐケアできるように待っている、という事になった。

 他人しかも異性に入浴介助をされるのは恥ずかしいのか、その方はなんかかんか言い訳をして、お風呂に入りたがらなかったからだ。

 

 通院の前日、私が仕事場から休み時間に電話すると、延々

「入ってください」

「いや、まだ先でいいよ」

と、やりとりしていたらしい。

「今日入らなければタクシーが使えません。介護タクシーでさえそうなんだから、一般のタクシーなんて乗車拒否されてしまいます。」と、私が泣き事のように言うと、専門員の方は

「わかりました。もう一度説得してみます」

と、言ってくれた。

 

 ところが、やっと説得できて、いざお湯を沸かそうとすると、風呂釜が壊れていて、ごくぬるいお湯にしかならなかったそうだ。

 で、この冬場にこれでは風邪を引いてしまうという事で、足だけ洗ってもらったそうだ。

 故障している風呂釜。つまり、よほど暑い時期以外は、何カ月も風呂に入っていなかった、という事になる。

 

 私はいよいよ7時に一緒に出て、4時間かけて同行しなくてはならないかも、と半ば覚悟を決めた。

 この日は、私は休みを取って付き添う事になった。

 

 今まで一人で行ってたんだし…とも思うが、あの歩きを見たら、とても4時間の道のりを一人で歩かせるなんてできない。

 

 その日の帰り、格安店で靴とトレパンを買い、薬局で専門員さんが言っていたおむつを買った。

 

 帰りにセンターに電話すると、当日の朝、専門員さんが着替えは手伝ってくれる事になった。

 彼女は他の仕事が入っていて同行はできないが、病院に着いたら、センターの職員さん二人が私達と落ち合って、お医者さんに、介護認定の同意書を書いて欲しいと頼んでくれるそうだ。

 いやぁ、どんなに心強かったか。

 着替えを私一人でやらなければならない(特におむつ)とか、お医者さんに同意書を頼むのも、説明下手な私が言って伝わるのか、とても不安だったからだ。

 

 当日の朝行くと、もうその方は自分で下着も替え、出かける用の服を着て待っていた。

(あれ、着替えられるの?じゃぁ、あの何カ月も着替えてないようなズボン下はなんだったのか?)

 

 ともあれ、一見この井手達ならタクシーも問題なく乗れるかも、と思えたが

「申し訳ないですが、もう一度脱いでおむつをつけて下さい」と専門員さんが言った。

 その方は、やはりおむつには抵抗があるのか、言い方は穏やかながら、なんかかんか言って断ろうとした。

「もし座席を汚してしまったら、大変な額を請求されてしまいます」

なんとか説得した。

 

 私は、その方が

「だったらタクシーに乗らずに歩いて行く」と言い出さないかヒヤヒヤした。

 

一見小奇麗な格好をしていたが、やはりジーンズが匂ったので、買ってきたトレパンに着替えてもらった。ズボン下も替えた。

「あそこの病院では、トレパンで来る人なんかいないんで」

その方は言ったが、匂うジーンズよりはトレパンの方がマシである。

 その方なりに身なりに気を使っているのだが、自分が尿を漏らしている自覚が無いのか、濡れていたり、匂いには無頓着だったりするのが不思議といえば不思議であった。

 

 専門員さんは、汚れた服をまとめて洗濯機に入れ、湯沸かし器からやかんとたらいに交互にお湯を入れ、洗濯機に注いでいった。

 

 今回は一般のタクシーを呼んだ。

 運転手は始終無愛想だった。

 何よりもヒーターをつけてくれない。

 私は暑がりだからいいのだが、お年寄りには寒いんじゃないかと気がかりだった。

 しかし、ヒーターをつけてくれと言えなかったのだ。

 服は着替えたものの、お風呂に入っていないので、やはり匂うのかもしれない。

 むやみにヒーターを、と言って、「つけると匂いが充満するので」とか言って揉めたり、最悪降ろされたりしたら…と思うと強気に出れなかった。

 

 病院に着くと、職員さん二人を探した。

 お年寄りは、いつもより血圧の数値が高いと言って何度も測り直していた。

 後で知ったのだが、寒い所にいると血圧が上がるのだそうだ。

 

 職員さんがお医者さんに話してくれ、同意書はすんなり書いてくれる事になった。

 帰りのタクシーは病院の敷地で拾え、運転手さんもいい人だった。

 

 その後、その方は最初はおむつを嫌がっていたが、徐々に家でもつけていてくれるようになった。

 

 私も、最初汚れたズボン下を見た時、また、病院から帰って二日後には再びトレパンがビシャビシャになっているのを見た時にはドン引きしたが、今ではおむつの替えを手伝うようにまでなった。

 

 嫌がるのをおむつをつけるように説得し、足が悪くて着替えもしんどいのに、無理を言って着替えさせる、これには、自分のやっている事はいらんおせっかいなのかなぁと思う事もあった。

 

 もとより、ごく幼い幼児とボケてしまったお年寄りは、排せつ物への抵抗感が少ない。

 排せつ物とは同居できないある一定から一定の年齢の大多数とは、世界観が違うのだと思う。

 同居している幼児や老人が家の中で排せつ物を垂れ流していたら、困るのは同居人だからおむつというものもある訳だが、私は同居人ではないし、家の中をどう汚そうと、その方の勝手と言えば勝手である。

 

 しかし、大多数の人間の汚れと匂いに対する嫌悪感を思うと、やはり皆で清潔にさせるしかないのかな、とも思う。

 

 最近わかったのだが、今まで、その方は部分的にボケていて(話はしっかりしていて、とても認知症とは思えないのだが)おもらしをしている自覚が無いんじゃないか、と思っていたが、ここ数日はおむつが濡れていないのにズボンがびっしょりの事も多く、どうやらちゃんとトイレでしているが、足が悪くまっすぐ立てないので中腰のまま用を足す、それでズボンにかかってしまうらしい。

 いや、座っていた場所がぐっしょり濡れていた事もあるので、やはり失禁もあると思う。

 

 それまでは一日おき、年が明けてからは毎日顔を出しているが、もう毎日着替えさせて、前の洗濯物が乾いたらすぐまた洗濯しないと、という状態である。

 

 自分の部屋さえろくに片付けられない私が、よくここまで他人の面倒が見れたな、と思うが、これもひとえに、その方の性格がとても良いからだと思う。

 

 病院の中でも、車椅子を娘か嫁さんに押してもらっているのに、あごでこき使うみたいな物言いをする人を見かけたが、私はあんなのはとても無理だと思う。

 

 ましてや、同居していないから、時々除菌スプレーでシュッシュするだけだけど、自分も生活する部屋で、始終絨毯がおしっこでびっちょりになっていたら、本当に泣きが入るだろう。

 

 それに、私は弁当を買ってくるだけだが、料理もしなければならない、とかだったら…。

 

 介護は嫁の仕事、と言い切るような政治家を居すわらせてはならないと思う。

 子育て・介護は社会全体の仕事、と考えてくれる政治家に一票を投じたいものだ。